クラウドコンピューティング時代の倒産処理における個人情報保護と管財人の責任負担に関する一考察－環境汚染問題に関する議論を手がかりとして

摘要

クラウドコンピューティングが今後、社会基盤並びに社会的資産としてより安定した機能を果たしてゆくためには、クラウドコンピューティングが持つネットワーク外部性がもたらす価値の継承が迅速·効率的になされることが必要となる。しかし、現行の倒産法制と個人情報保護法制間の連携は例えば事業と個人情報が分離·独立して換価·売却される場合の対応が想定されていないなど、企業の有する情報の利用·処理形態が多様化する現状を必ずしも反映しているとは言えない。倒産処理手続において、管財人の主要任務は破産会社の財産を正確に確保·管理し、債権者の債権の満足に資することである。一方、管財人は本人にとっても組織としての自律性を失った破産会社に代わり、自らのデータの帰趨を照会するほぼ唯一の拠り所とも言え、管財人は債権者と本人の両方から板挟みの状態となる。この点を踏まえて、本稿ではクラウドの持つ諸特性のうち、特に倒産処理に最も影響を与えると思われる情報の分散処理の側面に着目し、環境汚染物質の流出問題を抱えて倒産した企業の破産管財人の責任のあり方を扱った先行研究を手ががリとして、クラウドコンピューティング時代の倒産処理における管財人の責任負担の方向性はどうあるべきがを検討する。なお、本論の記述は清算型手続の場合を念頭に置いている。