肛門嚢腺癌

摘要

肛門嚢腺は肛門嚢の周囲に分布しているアポクリン腺由来 の組織である。肛門嚢腺由来の腫瘍はすべて悪性で，内側腸骨 リンパ節などに高頻度で転移する。また，上皮小体ホルモン関連タンパク（PTH-rp)の分泌によって，高カルシウム血症を 伴うこともある。肛門を中心として4時ならびに8時の方向 から発牛することが多く，肛門周囲腺由来の病変と比較する と深部に位置していることから，大型化すると直腸を圧迫し て排便障害を起こすこともある。肛門嚢腺はァポクリン腺由 来であるが，犬の肛門嚢腺癌の細胞は神経内分泌系腫瘍の細 胞に類似している"。核細胞質比が高い小型の上皮細胞で，淡 青色の細胞質に正円形の核を有しており，細胞境界がやや不 明瞭である。多くの内分泌、神経内分泌系腫瘍と同様に，悪性 の腫瘍であるにもかかわらず，異型性を示さないことが多く，細胞質の脆弱性のため，多数の裸核が認められることもある,また，肛門嚢の内容物と考えられる角化物や細胞質が空胞ィ! した多数のマクロファージが認められることもある。高力ノレ シゥム血症の原因の全身的な精査の結果,原発巣よりも腹K 内の転移病巣が先に発見されることがある。内側腸骨リンパ 節の転移病巣では腫瘍細胞によってリンパ組織力；完全に置 されていることが多く，他の内分泌、神経内分泌系腫瘍との 鑑別が困難となるケースもある。