我が国の森林管理と林業の将来像－国民的ニーズにいかに応えていくべきか

摘要

森林·林業再生プランは2020年に50％の木材自給率を目指すという象徴的な目標を掲げたが，多くの国民の森林に対する期待はまず公益的機能の確保である．特に官と公は林業の振興とともに，森林整備の確実な道筋をつけることが求められている．そして，森林に覆われた我が国において，再生可能な生物資源である森林を活用することへの期待も大きい．しかし現状で，プランが目指す自給率50％のハードルは相当に高く，本論でこれまで指摘してきたような様々な課題に官·公·共·産が連携して取り組hでいかなければならない．10年後には我が国の人工林資源の成熟はさらに進み，生産林でまとまった面積の皆伐も視野に入ってくる．またエネルギー需要もその中に織り込まれる状況かもしれない．そのとき皆伐して再造林する循環的林業経営が，補助金は全く不要とはいかなくとも，採算性を大幅に改善していなければならない．結局のところ10年後の自給率は，林業側の合理化の努力と，国民の公益的機能および循環的木材生産への期待，そして国家の財政状況という3者のバランスで決まってくるのではなかろうか．