「脂質膜研究の新潮流：基礎物性と応用展開」の特集にあたって

摘要

生物は細胞を構成単位として成り立ち，その細胞内外を隔てる原形質膜（いわゆる細胞膜）および細胞内に含まれるミトコンドリアやゴルジ体といった細胞内小器官を形作るオルガネラ膜の総称が生体膜である．生体膜は，複合脂質の一種であるリン脂質が形成する二重膜を基本構造とする．したがって，リン脂質を水中に分散させることで，その自発的な自己組織化により形成されるベシクルやリポソームと呼ばれる脂質二重膜の閉鎖型小胞体は格好の生体膜モデルと見なすことができる．