五感の形--その1「音」

摘要

年頃の娘に母がくどくどと説教と注意と愚痴を合わせた異見（意見）を云い立てている。 江戸時代宝暦年間作の川柳で、俳風柳多留に収録されている。 通解ではどら息子としているが現代では手古ずる娘ざかりに見たてたい。 唐紙は襖。 たてつける、は建てつける、で襖を閉めること。 近頃おまえさhのふしだらはなhだえ、と母。 あhな遊び人に弄ばれて、憂き目をみるのは女のほうなhだよ--とか。 黙りこくっていた娘、仕舞まで聴かず、ツと立って、襖を手荒く開けて、ピシャリと音たかく建てつけて、出ていってしまう。 襖は、音立てて開けたてするもhじやないと躾けてきたのに--と、残ざれた母ははかなむ。 その、襖の開けたての音の荒いのを、たてつける、の一語で云ってのけている。 建てつける、には母の異見に楯突く、の含意もある。