現代左官事情その42「建築と左官」

摘要

宮城県との県境に位置するところに花泉という地名がある。 そこで見かけられるのは東北地方の民家と装飾豊かな土蔵である。 その装飾豊かな土蔵を建築したのが「気仙職人」である。 かつて、仙台藩の祖の伊達政宗は仙台城の築城にあたり多くの工匠を飛弾高山より呼び寄せ、特に大広間の設計施工をした工匠は京都でも有名な人物であった。 その後、彼らは大崎八幡宮を作り、そのときの棟札に棟梁、刑部左衛門国次、同梅村三十部席次とある。 彼らの出自は一説には根来衆であるともいわれており、落語の左甚五郎噺で「ねずみ」でも有名である。 その多くの工匠を控えて仙台藩の境界地域に位置する気仙地方では江戸期から技術の高さが有名であった。 このような職人を多く輩出できたのは、この地の信仰がもたらしたことに背景がある。 ここでの民家には浄土莫宗を中心とする多くの持仏堂があり、これを土地の人々は『おみどう』と呼hでいる。 これらの建築を通して技術の向上と職人の需要を増加させていったといえよう。