社会問題への対応

摘要

大阪府立公衆衛生研究所は自治体の研究所であり，社会問題に対応する必要があった。そのひとつが1980年代後半から社会問題になった石綿である。まず1986年に，横須賀市で道路への石綿の不法投棄が発覚した。横須賀の米軍基地の空母ミッドウエーの改修工事で発生した廃棄物であった。続いて1987年から1988年にかけて，学校での吹き付け石綿問題が連日報道された。当時は小学校の渡り廊下の天井などに石綿が剥きだしで吹き付けられていたのである(写真1)。この問題を受けて，1989年に大阪府立公衆衛生研究所ではX線回折装置を導入し，大阪府民からの依頼により，建材などの石綿測定を開始した。私が分析担当であった。この時が石綿問題に関わった最初である。