高齢者のカーナビ操作基準に関する検討

摘要

高齢者の免許保有者数は年々増加しており，65 歳以上の男性の63％が運転免許を保有している（2001年12月末）．加齢とともに近点視力が低下する高齢者にとって，地理不案内な場所を道路地図を頼りに経路を選択して運転することによる負荷は非高齢者に比べて非常に大きいと予想される．カーナビは，経路探索による負荷を低減することから，非高齢者以上に高齢者にとって利便性が高いものと思われる．一方，ナビ使用により主タスクである運転に及ぼす影響が懸念されることから，1997年に道路交通法が改訂され，ナビを注視し続けることが禁止された．(社)日本自動車工業会では1990年に初版ガイドラインを策定し，その後改訂を重ね，ナビの操作·視認行動が運転に支障を来たさないよう運転中の煩雑な操作を制限し，運転中の情報提供やナビ操作基準が記載されている．また，国土交通省自動車交通局では2001年に「車載画像表示装置の基準策定検討会」を設置し，運転中の操作·視認限界に関する基準について，「画像表示装置のヒューマン·マシン·インタフェースに関する性能目標について」を策定した．この性能目標には，60歳以下の非高齢ドライバを被験者の対象とした一連の試験研究結果を基にした走行中のナビの視認·操作基準が記載されている．本研究では，今後，高齢ドライバが増加することから，「性能目標」の基準が高齢ドライバにも非高齢者と同様に適用できるか否かを検討した．