熱処理による素材の機能向上（その1）--製造技術と材料特性および金型材料の熱処理方法

摘要

工具鋼は、表1に示すようにJIS鋼とメーカーが開発した独自鋼の2種類が用いられている。 工具鋼はその用途に応じ冷間プレス鋼、温熱間鍛造用鋼、熱押し、一般プレス用鋼、ダイカスト用鋼、プラスソテク金型用鋼に分けられ、プラスチック金型用鋼を除く工具鋼の硬さと靭性に注目しその位置付けを図1に示す。 一般に金型を製造する場合、図2に示すように材料－素材加工-熱処理-家面処理と多くの工程を経ることから、材料の選択のみならず熱処理方法の選択も十分な配慮が必要となる。 たとえば、従来工程で製造された熱間工具鋼（SKD61）の衝撃値が低かった試験片の破面を調査すると、写真1－a）に示すようなMC炭化物が認めれ、そのミクロ組織を確認すると写真1-b）に示すような組織中に認められる租大な黒いMC炭化物が観察されることから、材料特性は，材料品質に大きく影響されていることを示している。 また，焼人冷却速度を変えた材料の衝撃値は、図3に示すように焼入冷却速度が速いほど同一硬さでの衝撃値も高くなる。 以上のように、材料品質だけでなく、材料の熱処理方法も製品としての金型品質に大きな影響を与えていることが分かる。