定常部抑圧による音声明瞭度改善のための前処理－異なる残響環境下について

摘要

残響環境下では，音声が聞き取りづらくなる場合がある．我々は以前の研究（荒井他2001, Arai et alい，2002）で，直前の残響成分が現在の音声信号をマスクするために音声明瞭度が減少すると考え，実験によりそれを確認した．そこではマスキングの影響を抑えるためにエネルギは比較的大きいが，音声知覚にはそれほど重要ではないとされる定常部を抑圧する処理を提案した．処理の効果は残響時間によって異なることから，本研究では定常部抑圧処理と残響時間の関連を調べるために人工的に作成した数種類の残響を用いて聴取実験を行った．結果からいくつかの残響条件で処理による改善が見られ，荒井らの手法は，残響環境下において音声明瞭度を改善するための前処理として有効であると確認することができた．