パンタグラフの空力騒音低減に関する最近の研究状況

摘要

新幹線の今後の更なる高速化においては，沿線騒音の低減がますます重要な課題となっている。沿線騒音のなかでも，列車速度の6乗から8乗に比例してそのパワーが増加する空力騒音（以下，空力音と記す）は沿線騒音への寄与が大きい。パンタグラフは車両屋根面から上部に突き出すように設置されるため，列車速度に近い対向風にさらされることから，新幹線の車両部材のなかでも主要な空力音源の一つとなっている。新幹線開業から50年以上を経た現在では，新幹線用パンタグラフの空力音低減をはじめとした各種研究が進められた結果，近年の新幹線車両では主として図-1に示すシングルアームパンタグラフや，その改良型のパンタグラフが使用されている。しかし，今後更なる空力音低減を実現するためには，従来の形状改良による空力音低減手法の研究を進めるだけではなく，部材の表面性状変更や流れ場制御の適用と言った新しい手法についての検討もまた重要であり，筆者らは継続的にこれらの研究に取り組hでいる。本稿では，その最近の研究状況について紹介する。