池田酒から伊丹酒へ、そして伝法

摘要

古代資料に酒が顔を覗かせるのは「魏志倭人伝」が最初であるといわれている。その記述から、慶弔の折に酒を酌み交わし大勢で祝福し、あるいは故人を忍ぶ風習が2世紀に存在したこと、そして酒は集まった大勢の人々の心を高揚させたり、あるいは沈潜させたりして集団の心をひとつにする機能を持っていたことを知るのである。ここに出てくる酒は、おそらく自然発酵した果実酒の頬であったと考えられる。工業的に生産するにはほど遠く、したがって手に入る量は限られたものであり飲用機会も限られていた、まさに貴重品であったことがうかがえる。