連載⑤～食の断面図－鰹だしの不思議な魅力を探る(5)：鰹だしの魅力は脂肪の魔力と同じ機構で発生する

摘要

和食を代表する味として鰹だしを選び，二瓶選択法によりコーン油と鰹だしとに対するマウスの嗜好を調べた所，7日間にわたりほぼ差がないことが判明した。 最初の試験はマウスのカロリーに対する欲求の影響を考慮し，鰹だし液にコーンスターチを添加し，コーン油とカロリーをほぼ同一にして行われた。 この鰹だし風味を付与しないコーンスターチ懸濁液とコーン油懸濁液との二瓶選択法でマウスは明らかにコーン油を好hだ。 次に行われた鰹だし風味を付けたコーンスターチ懸濁液とコーン油との間にマウスの嗜好差は認められなかった。 鰹だしの風味がコーンスターチに加わり魅力を増加させたといえる。 鰹だし風味のコーンスターチ懸濁液は，だし味の効いたでh粉食に相当する。ご飯と味噌汁そしてだし味の主菜が加わった和食とも又だし風味の強いおにぎり食とも言えるのかも知れない。 これらの典型的な和食がコーン油に代表される脂肪の多い食事とその魅力度において拮抗し得る可能性を示しているのだ。 少し飛躍して考えると，和食を始めとしたアジアの比較的脂肪分の少ない食文化が存在し得たのは，鰹だしに代表されるだしの魅力によるものであることを伺わせるとも言える。 二瓶選択法によるシンプルな実験結果は大きな可能性を示唆している。 しかし，10分間の呈示による二瓶選択法は執着性をみるものではない。脂肪を用いたCPP法による試験では，脂肪に対して強い執着が認められている。 日本を含めたアジアの食文化が比較的低脂肪で推移し得たのは，鰹だし等の嗜好性が脂肪に劣らぬ力を持っていたことに起因すると仮定する。すると鰹だしを用いたCPP法によりその執着性を明らかにする必要がある。