粒子解析法によるオイルレート予測シミュレーション技術スクロール圧縮機における油ミストの流れ解析

摘要

冷凍空調用圧縮機のグローバル市場において，空調市場の拡大や部分負荷性能も踏まえた省エネ性評価の導入を背景に低コスト化·運転範囲のワイドレンジ化の需要が高まっている．そこで，低コスト化を実現するためには圧縮機をコンパクトにし軽量化する対応が直接的で効果が大きく，且つワイドレンジ化を実現するためには圧縮機を高速運転する対応が求められる．それは圧縮行程容積を大きくし，ワイドレンジ化する対応では低コスト化との両立ができないためである．しかし，一方でオイルレート（以下，OCR; Oil Circulation Rate）に関してはコンパクト化により圧縮機内部空間が小さくなると，吐出管近傍の流速が増加することになるため，油ミストが吐出管からサイクル配管へ吐出される量は増加してしまう．同様に，高速運転化により吐出管近傍の流速が増加すると，OCRは増加する傾向になる．OCR増加は冷凍サイクル内の伝熱性能低下や圧力損失増加をもたらすため，OCRの低減が課題となっている．このため，圧縮機開発においては圧縮機内部の流動状態を把握しながら課題の解決を図っていく必要がある．現状ではバランサ，吐出管，モータ，油溜り部のそれぞれの形状や位置関係が多種多様であり，課題の解決までに多くの実験工数や試験期間を要してしまっている．