一杯のコーヒーから（38）－感情工学：知恵の活用へ向けて

摘要

感情（以下Emotion）への関心が，最近多くの分野で高まってきた．工学分野も例外ではない．今回は，なぜ工学分野において感情がこれから重要となるかについて，筆者の考えを述べたい．本文の内容の多くは，既にこれまでのコラムで紹介している．本文では，それらを整理し，今後「工学は，知識の活用だけではなく，知恵の活用をも目指すべきである」と主張したい．20世紀は状況変化が少なく，工学は，文脈独立のスタティックなアプローチが主体であり，合理性を基盤として発展してきた．当時は，設計者が状況を予測でき，機能の再現性が重視された．機械はmaster-slave関係を基本に設計され，機械は，ユーザー（人間）の指示どおりに動く道具であった．機械だけではない，ユーザーも設計者の意図どおりに操作することを求められていたという点でやはりmaster-slave関係にあった．