雑音駆動音声の言語·非言語知覚と室内音響特性による影響の検討

摘要

本研究の目的は，室内音響特性（残響）が，雑音駆動音声の個人性や感情といった非言語情報の知覚にどのような影響を与えるのかを明らかにすることりである．残響は，音声の言語情報知覚，特に明瞭性や了解性に大きな影響を与えることが知られているが，非言語情報の知覚に影響を与えるかどうかは未だ不明である．本研究では，残響と非言語情報の知覚の関係を調査するために，残響音声を対象に作成した雑音駆動音声を使用して，話者認識と感情認識の実験を行った．残響音声は，5つの残響時間（0.1，0.3，0.5，1.0，2.0s）でのSchroederの統計的室内インパルス応答を原信号に畳み込むことで得られた．話者認識の実験結果では，残響条件に関する有意効果はみられなかった．一方，感情認識の実験結果では，残響条件に関する有意効果はみられたが，残響時間が2秒のときのみであった．これらの結果から，基本的には残響による非言語知覚への影響はないことがわかった．