音の広がり感に関する音響物理量の時間変化と感動評価との関係

摘要

近年，音響品質を客観的に評価することを目的に，臨場感や感動といった心理効果と音響物理量の関係を調べる研究がなされている．本報告では，スピーカの見込み角によって音の広がりを制御し，広がり感に関係がある両耳間相関度や音圧レベルなどの音響物理量の推移と感動の度合いの関係について報告する．異なるスピーカの見込み角で音楽を再生し，音楽再生音の広がり感や感動の度合いを実時間で評価させた．その結果，以下のことが分かった．1）広がり感は，音圧レベルと両耳間相互相関度（IACC）から独立に短期的·長期的な影響を受ける．2）広がり感と感動の度合いの変化のタイミングが一致する．3）感動の度合いは，聴取後数分で差が顕著になる場合があり，短時間に細切れした音楽と全曲を聞いた場合とでは，評価実験の結果が異なる可能性がある．