人類の歴史からみた“食”と宗教のかかわり：第16回 （第12章）西洋科学技術文明と飽食－共生の“食”への転換を求めて

摘要

国民に安くて栄養価のある“食”を供給しようとした結果，生活習慣病を蔓延させてしまったアメリカ．その背景には西洋科学技術文明があると考えられる．この西洋科学技術文明には一神教がベースとなっている．本文明は科学技術の推進には強いが，欲望を開放し飽食や環境破壊をもたらしている．これは，アメリカのみならず世界に浸透している新しい形態の宗教とでもいえるものであろう．アメリカのみならず人類の未来を考えるとき，私たちはこの西洋科学技術文明の良さを活かしながら価値創造を行っていかなければならないと考える．仏教をはじめとした東洋の思想は汎神教であり，多様な価値を受け入れる．したがって，この東洋の哲学（仏教）により世界に浸透している西洋科学技術文明を止揚して価値創造をしていかなければならない．仏教は欲望の開放をコントロールする“共生”の生き方を教えている．仏教を根底にしたとき，西洋科学技術文明の良さを活かしながら，さらに健康な食の追求ができるであろうし，飽食から教養ある“食”への転換も可能にすると考える．アメリカは世界に影響を与える大国である．仏教の共生の精神は，自国の“食”ばかりではなく，後進諸国の飢餓状態の人々にも同苦し，地球全体の共生を推進する力になるものと考える．アメリカの真のリーダーシップに大いに期待したい．