文化財漆工品を観察する

摘要

日本列島においては，縄文時代以降，ウルシノキから採れる樹液を塗料として利用した漆製品が各地で出土している。演者はかつて考古資料の保存処理に携わる中で，漆製品は時代により，また同じ道跡から出土したものであっても塗装により，保存処理の結果に差が生じることをしばしば経験した。そこで約30年前より，出土した漆製品の保存処理の歩留まりを向上させる目的で，漆塗膜の薄片を作製し，塗装構造と保存処理結果との関係について調査を行ってきた。