電子スペックル干渉法を用いた人工寛骨臼周辺の変形挙動解析

摘要

全人工股関節手術(THR)は変形性股関節症，慢性関節リウマチ，大腿骨頭壊死などの疾患治療に実施されてきたが，感染，緩み等の問題によって再置換を余儀なくすることがある．緩みの主な原因としては，骨頭と寛骨臼（カップ）の摩擦·摩耗によって生じた粒子による骨吸収，骨セメント·骨の界面における局部的な変形·応力および骨セメント内の高い応力値による破壊などがある．カップの耐用年数を向上させて再置換手術を減らすためには，カップの材質，デザイン，手術手技，固定法などの開発およびカップ固定部周辺の力学的挙動を明らかにすることが重要である．近年は，特に有限要素解析(FEM) などのコンピュータを用いたシミュレーション解析の研究が精力的に行なわれ，多くの知見が与えられた．一方，臨床学的および実験力学的な基礎研究は，シミュレーション解析の評価基準となる重要な役割を担う．生体内での実験としては，カップ内に作用する荷重を直接測定する試みがあるが，制約が多くて充分な知見を得ることは困難である．