バソフレシンV_2受容体拮抗薬 卜ルバプ夕ンの創製

摘要

「水だけを出す利尿薬が欲しい」臨床現場からの声を受け，1)バソプレシンV2受容体拮抗薬の研究プロジェクトは立ち上がった.心不全における体液貯 留の治療の基本は水.ナトリウム貯留を防ぐことで あり，利尿薬は，心不全患者の体液貯留に伴う所見 (下肢浮腫，肺うつ血等）を軽減するための最も有効 な薬剤である.しかしながら，これまで使用されて きた利尿薬は，すべて塩類排泄型であり，その作用 から低ナトリウム血症，低カリウム血症等の血清電 解質低下が起こりやすく，塩類排泄型利尿薬を増 量?追加できないような心不全患者に対しては，塩 類排泄を増加させない新しい作用機序の利尿薬，す なわち"水利尿薬"が求められていた.そこに冒頭 の声である.偶然にも，当時の研究所長は大学時 代，バソプレシンが卒論のテーマだった.かくし て，水利尿薬=バソプレシン拮抗薬は容易に結び付 き，電解質排泄の増加を伴わず過剰な水のみを排泄 する「水利尿薬」を目指した探索研究は始まった.