「医療連携のもと，薬物療法を主体的に行える薬剤師」の養成 21世紀の医療を支える新しい薬剤師像の提案

摘要

2007-2008年に連続して奈良で起こつた「妊婦たらい回し事故」は，「日本は医療先進国である」と何となく信じてきた多くの国民に，大きな衝撃を与えた。救急患者の診療拒否に限らず，医師の過労死，診療科目の休止，病院の閉鎖などは，実は全国各地で日常的に起こつており，わが国はいままさに「医療崩壊」といってもよい状態である。このような医療崩壊を引き起こした最大の原因は，いうまでもなく深刻な医師不足にある。2008 年になってようやく政府は，医学部入学定員の増加に踏み切つたが，これをいまただちに行つたとしても医師の絶対数不足が根本的に解消するには今後数十年の時間がかかることになる。しかし，医療崩壊の現状は予想以上に深刻であり，もはや医師数の充足を待っている時間的余裕はない。したがって，少なくとも医療崩壊の"進行をくい止める"には，いまある「医療資源」を有効に活用する以外に方法はないとさえいわれている。