スピンダイス：磁気抵抗素子を用いた物理乱数発生器

摘要

近年、高度情報化社会の課題として、堅牢なセキュリティ通信への要求が高まっている。セキュリティ通信には、情報の暗号化が必然であり、高度な暗号には予測不可能な乱数が必要となる。乱数には、自然界のランダムな現象に基づき生成された物理乱数と、計算機により生成される疑似乱数がある。乱数とは、「等確率性」と「不予測性」を併せ持つ数列と定義される。ここで、「等確率性」とは、十分長い乱数があるとき、どこの部位（適当な長さを持つ部分数列）においても、その平均値が等しくなることであり、「不予測性」とはそれぞれの部分数列には相関がないことである。物理乱数は、基となる物理現象が独立事象であれば、本質的に「不予測性」を持つという特徴がある。一方、疑似乱数は、十分に長い周期を持つ関数（またはアルゴリズム）から、短期的には相関のない数列を生成するものであり、計算機演算には相性がよいが、多数のサンプルが入手できる場合、生成関数を推定することができ、結果として暗号化としての用途には向かない場合もある。