JIS A 1481-1によるアスベスト分析法の普及に向けて

摘要

現在，国内におけるアスベストの定性分析は，アスベストの定義からはじまり対象物質や適用範囲まで異なる2方法が規定されており，混乱が収まる気配は見られない。分析法の1つには，海外で標準的に用いられている2012年7月に制定されたISO22262-1による偏光顕微鏡法がある。その国内規格に相当するJIS A 1481-1が2014年3月に制定された。もう一つは，従来から日本国内のみで採用されているJIS A 1481-2X線回折·位相差分散顕微鏡法である。このX線回折·位相差分散顕微鏡法は，幾つかの問題点が指摘されている。1）試料を粉砕してアスベストの繊維が見辛くしている。2）繊維状でアスペクト比3：1と定義されているが繊維状であるか確認できない。非繊維状であるヘキ開粒子も含めてしまう。3）X線回折は同じ結晶構造であれば同様な回折パターンを示すため，アスベストの正確な判定が困難である。4）X線回折法と分散染色位相差顕微鏡法で同定を行うため，多くの光学特性から判断する偏光顕微鏡法より誤判定する確率が高い。5）建材製品中のアスベストだけを対象としており，アスベストが不純物として含有している恐れのある天然鉱物（バーミキュライトを原料とした吹付け材を除く）には適用できない，等である。