セルロースナノファイバーとプラスチック

摘要

平成26年6月24日に閣議決定されたアベノミクス「日本再興戦略」改訂2014－未来への挑戦－において，“木質バイオマスであるセルロースナノファイバー（超微細植物結晶繊維）の研究開発等によるマテリアル利用の促進に向けた取組を推進する”の一文が記載された．ここからセルロースナノファイバー（CNF：図1）を取り巻く状況は激変した．この4年の間にナノセルロースに関するいくつものナショナルプロジェクトが立ち上がり，多くの研究開発者がこの新材料の開発に取り組みはじめた．企業も独自のナノセルロースを開発，そしてプラントを建設し用途探索を進めている．特に製紙産業においては，その傾向が強い．紙の内需は，リーマンショックの反動で2010年に増加に転じたものの，その後減少が続いている．製紙メーカーの収益は市況の回復，事業の多角化により堅調であるが，紙での収益となると今後の予断を許さない状況であると思われる．このような背景により，製紙メーカーは新たな事業の柱としてCNFをはじめとするナノセルロースに期待している．その結果，様々な分野，用途に展開が始まっており，ユニークな特性を生かした商品も産まれている．