セルロースナノファイバーとバイオセラミックスの複合化

摘要

人工骨·骨補填剤の材料には、ハイドロキシアパタイトやβ型リン酸三カルシウム等のリン酸カルシウム系のバイオセラミックスや、ポリ乳酸製、コラーゲン繊維で補強したものなどがある。これらは、高強度で靭性も大きいことが必要であり、さらに骨伝導性の大きい多孔体構造でかつ強度もあるものが求められている。セルロースナノファイバー(CeNF)は、日本に豊富な資源であるパルプを主な原料とし、鉄の1/5の軽さで5倍の強度を有し、石英ガラス並みの低線熱膨張等の性質を有することから、次世代材料の有力候補として注目されている。骨は、コラーゲン繊維の周りにリン酸カルシウムが結合している構造を取っており、木がCeNFの周りにリグニンやへミセルロースがくっついているのと似ている。そこで、高価で手に入りにくいコラーゲン繊維の代わりに、より強度のあるCeNF をリン酸カルシウムと複合化すれば補強効果が期待できる。しかしながら、CeNFの耐熱温度は200°C程度であるため、本研究では、従来の1000°C以上の高温で焼結して作製する方法ではなく、100°C以下の低温で作製し、CeNFの添加効果を圧縮強度を中心に評価した。