【総論アルコール性臓器障害の実態と発生機序】

摘要

エタノールによる細胞障害は，主にその代謝過程で 発生するァセ卜アルデヒドゃ細胞内酵素反応の変化を 介していると考えられる。栄養障害，腸管由来のェン ドトキシン，サイ卜力イン，微小循環障害，免疫学的 機序などの因子も関与しているが，最近では酸化ス卜 レスを介した炎症の進展，転写因子を中心とする分子 学的なメカニズムを介した肝脂肪化や炎症，アポ卜一シスの機序，マイクロ RNAの関与，DNAのメチル化 の障害などが注目されている。アルコールによる臓器 障害は，消化管や肝臓にとどまらず全身臓器におよぶ。 飲酒以外の生活習慣，遺伝的要因などにより障害が発 症しやすい臓器が異なると考えられる。治療の基本は 節酒,断酒であるが，エタノールには強し、依存性があ るため，身体的，社会的理由から酒を減らす必要があつ ても実際に減らすことが難しい。アルコ一ル性臓器障 害の進展を予防する研究や，不可逆性と思われた臓器 障害が再生する研究も重要である。