アルツハイマー型認知症治療薬塩酸ドネペジルの海馬における神経新生促進作用

摘要

塩酸ドネペジルは，アセチルコリンエステラーゼを阻害することにより脳内コリン作動性神経を賦活するアルツハイマー型認知症治療薬である。最近の研究で塩酸ドネペジルが記憶学習に深く関わる海馬で神経新生を冗進する作用をもつことが明らかとなってきた。成体脳内の海馬歯状回には神経幹細胞が存在し，生涯を通じて神経細胞が新生していることが知られている。実験的に増殖性細胞をBrdUで標識し塩酸ドネペジルを4週間経口投与すると，免疫組織化学的解析で海馬歯状回のBrdU陽性細胞が増加することが観察された。神経幹組軌神経前駆細胞の増殖能，及び分化能には変化が見られなかったことから，このBrdU陽性細胞の増加は塩酸ドネペジルが新生神経細胞の生存率を高めた結果であることが示唆された。塩酸ドネペジルのアルツハイマー型認知症に対する臨床効果においてもこのような作用が一部関与している可能性が考えられる。