高仰角衛星回線における対流圏シンチレーションと大気乱流の関係

摘要

大阪電気通信大学（OECU、大阪府寝屋川市）で、2010年から2016年にかけて過去7年間1秒間隔で測定されたKu帯BS電波（11.84GHz、仰角41.4°、右旋円偏波）の受信レベル変動のデータを用いて、晴天時に観測される周期が数秒から数十秒程度の対流圏シンチレーションについて季節別に変動特性を解析し、最近のITU-R勧告による減衰量の累積時間率分布との比較を行った。夏季の高温多湿時に主に発生する対流性乱流による変動の累積時間率については、BS電波の測定値は衛星伝搬路の仰角や周波数、アンテナ口径、および月別の平均地上気温に基づくITU-R勧告値と比較的良い一致が見られた。一方1月から3月の冬季から早春にかけて、BS電波の測定値には年によって時間率は低いものの予測値をかなり上回る変動が確認される場合があった。これは従来の対流性乱流とは異なり冬季のジェット気流や季節風の増大に伴う層状性乱流との関連が予想され、今後さらに近隣のMUレーダーや境界層レーダー等による大気乱流の直接測定との比較が望まれる。