海洋環境が利尻島の1年目リシリコンブ 現存量に与える影響

摘要

リシリコ'ノプSaccharina japonica var. ochotensisは, 北海道では松前半島の白神岬から日本海沿岸および宗谷 海峡を経て知床岬まで分布する。主な分布域は羽幌町か ら網走市までで，主産地は稚内市，利尻島，礼文島であ る"。中でも利尻島産の天然リシリコンブは高級料理の 「出汁」として使われ産業的な優良種となっている。し かし，その生産量は1940年代の約1500トンから減少傾向 が続いており2).近年の生産量も100から250トンと不安 定な状態にある。また，その現存量は，リシリコンブを と"る干タムラサキゥ二 Strongylocentrotus nudusや ェゾバフンゥニ S. intermediusなど，経済価値が高い底 棲動物の身入りや成長にも影響を与える。よって，リシ リコンブ現存量の変動要因を明らかにすることは，計画 的な漁業経営を行う基礎的情報として重要である。これまで，コンブ類の生産量や現存量と冬季の水温に 負の関係があることが利尻島のリシリコンブ2>~4).北 海道後志f&岸のホソメコンプSaccharina japonica var. religioscfi、~s、,津軽海峡沿岸のマコ、ノブSaccharina japonica var. japonic*および青森県下北半島のマコンブ10>など 数多く報告されている。冬季の低水温は，鉛直混合の強 化5)や親潮系水の移流9)により発生し，その水塊は栄養 塩濃度が高いと考えられている。また，低水温はゥニ類 の摂餌活性を弱化させるので，総合的にコンブ類の生育 に良好な環境を形成すると考えられているれ。し かしながら，これらの報告の多くは，人為的な漁獲努力 が影響する漁獲量を算定基礎として解析が行われている ため，天然コンブの現存量変動を正確に捉えていない可 能性もある。また，栄養塩濃度については水温から推定 したものが多く ，実測値を用いて解析した研究は少ない。 そこで，1998年から2010年にかけて利尻島沓形地先に調 査ラインを設定してリシリコンブ現存量と海洋環境を調 査することで，水温，栄養塩濃度およびゥニ類現存量が 1年目リシリコンブ現存量に与える影響を解析した。