水産非対象生物の超音波散乱特性に関する研究

摘要

限りある水産資源を持続的に有効利用するためには. 適切な資源管理が重要である。そのためには，対象とす る海洋生物の精確な資源量情報が必要となる。わが国で は.年齢別の漁獲尾数を基礎データとするコホート解析(Virtual Population Analysis ： VPA)により資源量を 推定する方法が主流である"。しかし，当歳魚や1歳魚 が漁獲の主体となる魚種において.漁獲統計資料に頼る VPAでは若齢魚の資源量の推定は不確実性を伴うこと が指摘されている2)~5)。一方，漁業とは独立し.広範 囲を短時間で調査可能である計量魚群探知機（以下計量魚探機とする）を用いて.海洋生物の分布や現存量を調 ベる直接推定法がある。この手法は.計量魚探機で体積後方散乱強度SVまたは面積後方散乱強度SAを測定し， 対象生物一個体あたりの音響反射強度であるターゲット ストレングス（以下，TSとする）を用いて生物密度を算 出し，現存量を推定する。本手法は.北欧や北米を中心 に資源量調査手法として広く活用されている。本手法を 用いて.精度良く生物密度を推定するためには，生物一 個体あたりの音響反射強度であるTSが重要な鍵となる。 TSは.対象とする生物種や体サイズにより変化し.同一 個体であっても.周波数の違いによりTSの特性が顕著に 異なる場合がある。