乳牛の飼料と疾病

摘要

乳牛の栄養と疾病について，3つの視点で論議する.栄養管理の基本は.乾物摂取量(DMI) を最大化することであり，何よりも採食阻害要因を排除することが重要である.また.DMI要求量は， 乳牛の体重および乳量によって決定されるが.その物理的な摂取可能限界は，第三胃を通過できる繊維 の長さによって決定される.第三胃ひだを通過する長さは1.18-4mmとされており，TMRの摂取量を 高めるためには，粗飼料の切断長を短くすることも重要である.変質サイレージ給与による乳牛への影響を調査したところ.飼料の変質に伴い，血中および乳中尿素 窒素が上昇するとともに，多形核白血球（PMN)の活性酸素（ROS)産生量が増加した.このことから. 変質飼料由来のアンモニアなどの基発性塩基態窒素（VBN)せ,乳牛の自然免疫系にも影響を及ぼし， 白血球由来の：ROSによる酸化ストレスが乳房炎など感染症の発症要因になると考えられた.また.授精 前2週間以内に高VBN飼料を摂取した牛では.妊娠率が低下したことから，第一胃からの高アンモニ ァ吸収に関連する酸化ストレスによって妊娠成立が損なわれることが考えられた.分娩後の乳牛に毎日の濃厚飼料増給を異なる速度で行ったところ，増給が早い牛の第一胃では.顕著 な酢酸/プロピオン酸比の低下とリポ多糖（LPS)の増加力《観察された.産後の亜急性ルーメンァシドー シス（SARA)を防ぐための濃厚飼料給与は.分娩後5週目以降に最大量に到達させるべきである.