他動ステッピングに伴う感覚情報が皮質脊髄路および脊髄反射路の興奮性に与える影響

摘要

両下肢のステツビングを療法士ゃロボットがァシストしながら行う歩行トレーニングは不全脊髄損傷者の歩行再獲得に有効である.このトレーニングの理論は四足動物の研究結果に立脚している.すなわち，ステッピングにともなって喚起される感覚入力が脊髄の歩行中枢を賦活し,これが長期にわたって繰り返されることで脊髄神経回路の再組織化が生じ，その結果，歩行能力が回復する，というものである.しかし，ヒトの二足歩行と，四足動物の歩行における脊髄歩行中枢の貢献度は異なることが予想されることから，ヒトを対象とした研究が必要となる.とりわけ，ヒトにおいて高度に発達している皮質脊髄路の機能がこのトレーニングによってどのような影響を受けるのかはリハビリテーションの帰結とも直接かかわることから精査されるべき課題である.一方で，脊髄損傷後に生じる，損傷部以下の神経が支配する筋の過反射が，ステツビングトレー二ングによってどのような影響を受けるのかも，統制された実験条件で検証されるべき重要な課題である.