有機機能性材料を指向した新規リン含有π共役分子の創製

摘要

近年のエレクトロニクス分野の発展は大変目覚ましく、身近な生活においても、パソコンや携帯電話が年々軽量化?小型化されていくのを多くの読者諸氏も実感されていることだろう。こうしたエレクトロニクス分野の最近のトレンドとして有機材料が注目されている。無機材料と比較して、材料製造やデバイス作製におけるコストを抑えられる点に加えて、軽量性?柔軟性を附与できる点が有機材料を使う大きなメリットである。従って、有機機能性化合物の創出は、材料開発に繋がり得る重要な基礎研究と位置付けることができる。しかし,恥ずかしながら筆者のように頭から足の指先まで有機化学が染み付いてしまっている人間は、「機能」もさることながら、「分子の形?構造」についつい目が向いてしまう。直感的に美しいと感じる「分子の造形美」や「合成的な優雅さ」を味わいながら「機能」の創出に繋げるという、少し赘沢なアカデミック基礎研究の醍醐味を日々楽しませてもらっている。本稿では、最近筆者らが目下取り組hでいる、“リン元素”を機能創出の鍵とするπ共役分子の創製研究について、拙文ながらその経緯から綴ってみたい。