陽極酸化法により創製した二酸化チタンの機能

摘要

1.はじめに二酸化チタンTiO_2は,表面に吸着した有害な有機化学物質やバクテリア,ウイルスなどを紫外線照射により分解することから,「光触媒」として広く実用に供されている.光触媒現象は,半導体バンド理論により説明されている.すなわち,バンドギャップエネルギーが3.2eVであるTiO_2に,そのバンドギャップエネルギー相当よりも高いエネルギーの波長をもつ光を照射することで,価電子帯にある電子を伝導体に励起し,励起された電子は空気中の酸素と,価電子帯に生成した正孔は大気中の水分と反応し,それぞれスーパーオキシドアニオン(?O_2~-)やヒドロキシラジカル(?OH)というラジカル基を生成する.これらのラジカル基は原子状酸素を基本として電子や水素と結びつき,高い酸化力を有するために(自分自身は還元し相手を酸化させる)有機化合物などを酸化分解する.また,紫外線照射によりTiO_2上に滴下した水滴が拡がる「超親水性」は,「曇らないガラス」として浴室の鏡や,乗用車のサイドミラーなどに実用されている.さらに光触媒と超親水性を利用し,ビルや家屋の外壁を清浄に保っ「セルフクリーニング」も,環境浄化だけでなく景観確保に貢献している.超親水性の理解は必ずしも確立していないが,最表面の表面水酸基の吸着を促すTiO_2の欠陥構造が関与するとの機構が提案されている.