リグノセルロースの成分分離と水素化処理によるモノマー変換

摘要

1．はじめに近年，化石資源依存型社会から持続可能な循環型社会への転換を目指し，バイオマスを燃料や化成品などに変換するバイオリファイナリーの技術開発が行われている.リグノセルロースは地球上で最も多い再生可能な有機性資源であり，食料競合もないことから，魅力的な資源と考えられている.リグノセルロースは，グルコースがβ-l,4グリコシド結合した直鎖状ホモポリマーであるセルロース，キシロースやアラビノース，マンノースなど種々の糖残基が多様な結合をしたヘテロポリマーであるへミセルロース，フェニルプロパノイドが3次元的に不規則に重合した網目状ポリマーであるリグニンから構成されており，これらが共有結合や水素結合などで強固に結びついた複雑な高分子構造を形成している.バイオリファイナリーにおいては炭素効率の面からもこれらセルロース，へミセルロース，リグニンすべてを有効に活用していくことが望ましく，高分子構造の分解と分離，ならびに分離成分を標的化合物へと変換するさまざまな要素技術の開発が求められている.