がh診断治療に向けた新しいRI標識薬剤の開発

摘要

放射性同位元素（RI）は、医療分野において様々な臓器の機能検査や疾患の診断治療などに広く利用されており、放出する放射線によって使い分けられている。例えばγ線放出RIは、高い透過力を利用して体外から対象とする臓器の機能、あるいは、疾患の局在や状態を画像化することができる。核医学診断と呼ばれるこの方法は、1960年代より実施されており、ガンマカメラやS PEC T（単一光子放射断層撮像法）を用いた検査が行われてきた。また、1 98 0年代からは、ポジトロンが電子とともに消滅する際に放出する511keVのγ線を利用したPET（ポジトロン断層撮像法）検査が行われるようになった。特に~(18)F標識フルオロデオキシグルコース（~(18)FDG）が、がhの良悪性や転移の有無を調べるのに有用であることが明らかとなって以来、PET検査は急速に普及している。一方で飛程が短いβ線を放出するRlは、高い細胞殺傷能力を利用して治療に応用することができる。国内においてもβ線を放出する~(131)Iを用いた治療が19 5 0年代から実施されており、近年では20 0 7年にがhの骨転移の疼痛緩和を目的とした~(89)Srが認可された他、200 8年には悪性リンパ腫などの治療を目的とした~(90)Y標識ィブリツモマブーチウキセタン（商品名：ゼヴァリン）が認可され、高い治療成績を収めているなど、治療用RIの新たな広がりを見せている。このように、これまでにも医療分野において多くのRIやその標識薬剤が臨床で利用されてきた。しかし、未だ十分とは言えず、より有用な薬剤の開発が切望されている。