数学授業におけるPDAと手書き数式インターフェイスの活用

摘要

近年の教育現場におけるコンピュータの普及に伴い，国語や数学などの普通教科の授業においてもコンピュータ利用の実践事例が数多く報告されるようになってきた．しかし，その多くは，授業の最初から最後までコンピュータを積極的に使うような大掛かりなものであり，5分あるいは10分といった短時間利用のものは見られない．これは，硯在の教育現場で導入されているコンピュータが，定規やコンパスのように手軽に利用できる状態ではないことを意味している．パソコン教室での普通教科の授業は，教科書やノートを開くスペースがなく，児童?生徒の関心がパソコンに集中してしまう，という問題がある．普通教室においても，パソコンの起動に時間が取られ授業が中断してしまう，一人一台のパソコンを置くスペースがない，という問題がある．グラフ電卓を利用する事例もあるが，解像度が低く，カラーは使えない．これらの欠点を埋める候補としてPDA（Personal Digital Assistants）が挙げられる．PDAは場所も取らず，起動が速く，解像度も高い．何よりも手書きで文字が入力できる．これだけでも小?中学校での総合学習の時間における「調べ学習」に利用可能である．また，手書き数式インターフェースを用いれば，複雑なコマンドを知らなくとも，数式を入力し，計算を実行することが可能であると考えられる．以上のことを受けて，中学校及び高等学校の数学の授業において，手書き数式インターフェースを備えたPDAが有効であることを検証することが本研究の目的である．そのために，我々が開発したZaurus用の手書き数式インターフェースを有する数式処理システムAsirPadについて，利用可能な場面を調査し，授業設計を行い，教材を作成し，実践授業を実施した．