GPSによる地すべり移動量観測における留意点

摘要

2004年3月に改訂された農林水産省農村振興局監修の土地改良専業計画設討基準「農地地すべり防止対策」では，GPSによる地すべり移動量観測の追加が主な改言J項目の一つとなっている。 これは福岡ほか（1990）や丸山（1993）などにより導入事例が示された，地すべり移動量観測におけるGPSの利用が普及段階に至ったことを示すと考えられる。 しかし，GPSによる計測データには一定の誤差が含まれており，真の地すべり移動量との分離判定が困難な場合がある。本報告では，特に留意すべき誤差要因として，見かけの変位を生じさせる「GPS受信機の支柱傾動」，「対流圏遅延による年周的変化」および基線解析精度を低下させる「上空視界の制限」を取り上げ，活動中の地すべりにおけるGPS移動量観測デー夕を事例として，これらの誤差の評価と低減方法について検討する。