固体NMRによる水素位置と拡散挙動の解析

摘要

本稿では，紙面の都合上，比較的取りつきやすい話に絞った。 NMRのデータから結論を導き出すためには理論的な解析が必要であるが，解析の詳しい過程は省いた。 また，重要なことでも紹介できなかったことがたくさhある。 水素の拡散挙動を調べるためには，線幅の温度依存性以上に緩和時間の温度依存性を測定することが多い。 さらに，「固体高分解能」NMRの手法を用いてピーク位置を精密に決定することにより相構造を調べることもできる。 固体NMRと一口に言っても，いろいろな測定手法があり，測定するときもデータを解析するときも試料に応じて対応する必要がある。しかし，NMRの理論はかなり確立されており，ある程度学習すればそれなりに応用が利くものである。固体NMRは取りつきにくい手法かもしれないが，他の方法では得られない情報を与えてくれる。本稿では，金属水素化物に限ったが，その応用範囲は広い。