ヘンリー·コート－パドル法とウェールズの製鉄業

摘要

パドル作業は，パドラーと補助者の2人が組になって，12時間のシフトで約1500kgの鉄を製造した．パドリングは高度な熟練が必要とされ，作業の標準化や機械化が進まなかった．人力による重労働で，1人当たりの生産に限度があった．生産量への対応は炉の台数を増やすしかなかった．表2は1740年から1830年までの英国の銑鉄の生産量の推移である．それまで鉄の輸入大国であった英国は1800年を境に輸入から輸出に転じた．増大する鉄の消費量は1人工1.5トンの設備と技術で対応できる量ではなかった．一方で，溶鉱炉の規模は大きくなり，パドル炉のあとの機械加工は蒸気機関によって1基当たりの製造量をいくらでも増やせた．かつて鉄の生産の花形であ、つたパドル法が増産の足かせとなった．1基で鋳鉄を大量に製錬する炉が必要であった．ベシセマーの転炉やシーメンスの平炉の出現は時代の要請といえた．