結晶セルロース＝セオラス”の工業用途への新展開

摘要

結晶セルロース（Microcrystalline Cellulose：以下MCC）は，植物細胞壁の主要成分であるセルロースから，結晶部分を取出し精製された水不溶性の多糖類である。国内では，1970年に旭化成工業（株）（現旭化成（株））により商業生産が開始された。医薬品·医薬部外品（主に錠剤用賦形剤），食品（主に乳飲料，調味料の安定剤），一般工業用途で45年以上にわたり広く使用されている。その製品形態は，（1）粉体タイプ（MCCが単独で造粒·乾燥された製品）と（2）コロイダルタイプ（MCC製剤：MCCと水溶性高分子からなり造粒·乾燥された製品）の二種類がある。粉体タイプは，優れた圧縮成形性，保湿性により化粧品·医薬部外品，セラミックス，触媒等の分野で，タブレットの圧縮成形助剤，造粒助剤として使用されている。一方，コロイダルタイプは，水系媒体に分散された状態で，塗料·顔料·研磨剤等の懸濁安定剤，流動性改良剤として使用される。本稿では，比較的新しい用途である一般工業用途での新展開について紹介したい。