湿式分離技術による都市鉱山のレアメタルリサイクル

摘要

近年，都市鉱山からのレアメタル回収に関する話題をマスコミなどで頻繁に聞くようになった。こうした背景には，レアメタル資源の逼迫と価格の高騰，原産国による囲い込みや輸出規制，新興工業国の需要増と先進国を巻き込hだ資源の争奪戦，そして日本が輸入し国内に蓄積されたレアメタル量の多さなど，種々の要因が含まれている。レアメタルは日本が得意とする電子機器に欠くことのできない元素群としてその生命線を握っており，今後の安定した供給を確保するためにも官民をあげた協力体制が求められている。典型的な例として粗原料の100％を輸入に頼っている希土類元素があげられる。図1は全世界の希土類鉱石生産量を示し，中国に極度に集中している。図2は日本への国別輸入量を示し，やはり中国に9割を依存していることがわかる。図3は希土類元素の主要原料であるバストネサイト精鉱の価格変動を示し，近年右肩上がりに上昇している。同様の傾向は多くのレアメタルに見出される。レアメタルの安定供給対策として経済産業省が2007年に作成した資料には，以下の課題が提示されている。1）重点的な海外探鉱開発の実施と資源外交2）発生抑制·リサイクルの推進3）代替材料開発4）レアメタルの備蓄5）統計の整備·人材育成など本稿では特にレアメタルのリサイクルプロセスに焦点を当て，高い選択性を有する湿式分離技術によるレアメタル資源の効率的な分離回収法を紹介する。