持続的イノベーション創出に向けて 一基礎研究の拡充·強化のために一

摘要

科学·技術立国は我が国の国是である.平成26年5月30日には健康·医療戦略推進法と独立行政法人日本医 療研究開発機構法が施行され，技術立国·知財立国日本の再興に向けた政府主導による医療イノベーション創出 のための大戦略が始動した.文科省橋渡しプログラムをはじめとする文科省と厚労省のプログラムが推進され， 我が国のァカデミアは，薬事法に基づく研究開発を修得し，我が国にイノベーションを創出するR&Dパイブラ インが確立した.杭がh分子標的薬/抗体医薬開発に見られるとおり，我が国のァカデミアの発見·発明力は世 界をリードするポテンシャルがあり，産業界の医薬品開発力も世界の第三位を占めている.その一方で，莫大な 予算を国が投資してきたにもかかわらず，文科省や厚労省の一部のプロジェク卜以外は，科学'技術の育成に対 して+分貢献しているとは言えず，将来が危ぶまれる.2013年の世界大学ランキング（The Times Higher Education World University Rankings)では，日本の大学は100位以内に2大学が入るのみであり，韓国3,中 国2,香港2，シンガポールが2大学と，アジアの国々と比較して日本の優位性は既にない.さらに，サイェン スレベルの証ともいえる論文数及び被引用回数は，文科省橋渡し拠点7大学を合計してもハーバ—ド大学1校に およばない.これらの事実は深刻に受け止めねばならない.本章では，100年後を見据えた持続的イノべーショ ン創出を支える科学力を強化するために，ベルツ博士 （Dr. Erwin von BSIz)の言う「学問の雰囲気（風土）」を涵 養することに力点をおき，教育の根本的な改革を求め，基礎研究，特にライフサイエンス領域の基礎科学力の根 本的な強化策について論じた.