マルチアンビル装置の油圧プレスと金型

摘要

約1/4世紀前に，大阪大学の故川井直人先生のグループが分割球を使用したマルチアンビル装置を研究開発したときの苦労が，著書「超高圧の世界」に記されている。 形状，構造，大きさ，材質，加工精度など，トライアンドエラーの連続だったことがうかがえる。 特に，ラバープレスの取り扱いの大変さば「男殺し油の地獄」と表現され，まさに装置開発に挑戦していた当時の熱気が伝わり，今読み返してみても頭が下がる思いがする。 筆者は長年，衝撃銃の設計製作に携わってきたが，1985年に東北大金研の庄野安彦先生から初めてキュービックアンビル装置の製作依頼を受けた。 当時庄野研助教授だった八木健彦先生と設計を開始して以来，これまでに50台以上の装置を大学や各種研究機関に納入してきた(Table 1)。 幸い，その多くが順調に稼動し，これらを用いた国際級の研究成果が次々に発表されていることば，筆者にとって大きな喜びである。 本稿では，装置の基本部分である油圧プレスと金型について，その発展の経緯と現状を整理する。 高圧装置については，いくつかの参考図書が出版されているが，近年の大型プレスに関する装置技術を，メーカー側の視点でまとめた文献はばとhどないように思われるので，同種の装置を現在使用している，あるいは今後導入を検討している研究者の参考になれば幸いである。 なお，筆者の関わってきたものを中心にしているので，内容に偏りがある点はお許しいただきたい。