山梨県宝鉱床産の砒素に富む黄鉄鉱

摘要

山梨県の宝鉱床において，金を含有する黄鉄鉱型鉱石は塊状を呈し，黄鉄鉱は批素とアンチモンの含有量変化による累帯構造を示す。 特に金に富む試料では砒素含有量の変化による累帯構造が顕著である。 金を含有しない黄鉄鉱型鉱石は散点状を呈し，石英を伴い，黄鉄鉱内部の化学組成は均質である。 金の粒子は反射顕微鏡観察でもEPMA組成像の解析でも確認されていないが，これらは顕微鏡で識別されない大きさとして存在する可能性がある。 そしてその存在は，黄鉄鉱中の砒素（およびアンチモン）の存在に関係しているらしいことが強く暗示される。 また黄鉄鉱中の砒素（とおそらくアンチモン）含有量は硫黄と鉄含有量に対して負の相関を示し，硫黄と鉄の両方を置換していると考えられる。 金を含む黄鉄鉱型鉱石の黄鉄鉱中の砒素とアンチモン含有量変化による累帯構造は低温で形成したと考えられる。