中性子は鉱物学にどhな情報をもたらし得るか

摘要

2008年春,最初の中性子ビームがJ-PARCのパルス中性子実験施設に導入される予定である．日本における本格的な中性子を利用した鉱物学の始まりの光となることを切望している．特に，筆者らが興味をもっ高圧鉱物科学分野においては，米国ではすでに新世代パルス中性子実験施設（SNS）に専用ビームラインの建設が始まっており，近いうちに稼動を始める．放射光実験において，日本は多くの独自の高圧その場観察実験技術を開発し，常に世界の先端を走ってきた．中性子利用に関しても，まずは水と鉱物の相互作用をキーワードに世界の高圧鉱物科学を牽引していきたいと考えている．それには，筆者らだけでなく，結晶学，中性子光学などさまざまな分野の研究者の協力がどうしても必要である．本稿を読hでいただき，中性子の利用で広がる高圧鉱物科学の新しい世界に少しでも興味をもっていただけると幸いである．また，本稿では触れなかったが非弾性散乱を使った鉱物の格子振動やフォノンの分散などの研究も大変興味深い．この方面でも鉱物学の新たな展開があるのは疑う余地もなく，楽しみである．