脂肪酸結合蛋白質の新しい標的分子としてのドパミンD2受容体

摘要

長鎖不飽和脂肪酸は高次脳機能の調節に関与することが示唆されている.例えばn-3系長鎖不飽和脂肪酸であるドコサへキサヱン酸，エイコサペンタヱン酸は統合失調症の情動異常や認知機能低下を改善すること， n-6系長鎖不飽和脂肪酸であるァラキドン酸はァルッハィマー病等の老化に伴う記憶学習の低下を改善することが報告されている，これらの長鎖不飽和脂肪酸の細胞内輸送には，脂肪酸結合蛋白質であるfatty acid binding proteins (FABPs)が必要である.FABP分子ファミリーの中で，heart-type FABP (H-FABP/FABP3)のみが成熟神経細胞に発現する.一方，私達はH-FABPとドバミンD2受容体が結合していることを見いだした，さらに，H-FABP遺伝子欠損マウスでは，ドバミンD2受容体の機能低下が見られた.これらの結果は，長鎖不飽和脂肪酸はH-FABPを介してドパミン神経機能を調節することを示唆している.