性の基盤となるヒト前頭前野に及ほすCOMT Val 158 Met遺伝子多型の影響

摘要

柔軟性の欠如，嗜癖等において特徴づけられる衝動性(impulsivity)は，情動·注意。動機づけなどの複数の心的プロセスを基盤とし，ゆえに多様である.近年，そうした衝動性の機構が，動物研究，損傷脳研究の知見とともに， ヒト健常を対象とした脳機能ィメ一ジング法(brain function imaging)を利用した研究の進展に伴つて明らかになつてきた，衝動性は，心理。行動科学の知見に基づいて2つのサブタイプに大別することができる(e.g., Swarm et al, 2002).1つは，即時的に得られる小報酬を中長期的に得られる大報酬よりも優先してしまう，ギヤンブリング課題や遅延割引課題(delay discounting task)等において計測される衝動性(reward discount impulsivity;である。もつ一方は，本研究において注目した運動反応制御の不全を示す連動反応衡動性(response inhibition impulsivity)である。この柔軟かつ速やかな運動反応の制御がもとめられる文脈において機能不全を呈する衝動性は，ADHDをはじめ,アルコ-ル乱用等の物質乱用(Plutchik and Van Praag, 1995)，外界からの薬物的な作用によらない病的賭博(pathological gambling) (Slutske et al, 2005)等において共通して見いだされている。