鉱物ものがたり(8)-赤鉄鉱

摘要

黒々と光った赤鉄鉱の鉱石標本（図（a））を持ってみると，ずっしりとした重みがあり，丸みを帯びた滑らかな表面は人工物のような錯覚を覚える。赤鉄鉱は工業的に利用される主要な酸化鉄鉱物である。色は黒色や赤褐色，茶色等，様々である。外観も多様であるが，条痕は共通して赤褐色である。英名のHematiteは，ギリシャ語の「血」，haimaに語源を持つ。赤鉄鉱鉱床の成因は，主に，1)水中の鉄イオンの沈殿による堆積，2）接触変性作用，3）火山性ガスからの直接結晶化，がある。1番目の鉱床は縞状鉄鉱層（図（b））と呼ばれ，図の例では黒色～赤褐色の赤鉄鉱が堆積して層を成している（白色部分はシリカが主成分）。最大の鉄資源として地球上に広く分布し，工業的にも最も重要である。Fe203には，強い磁性を持つ同質異像のMaghemite（γーFe2O3）がある。